せっかく書き上げた原稿も、フォーマットが正しくなければKDPの審査でリジェクト(拒否)されてしまいます。また、審査は通っても表示が崩れていると読者からの低評価につながります。
本記事では、KDPで電子書籍を出版する際の原稿フォーマットを徹底解説します。対応ファイル形式の選び方から、目次の作り方、画像の埋め込み、日本語特有の縦書き・横書き設定、そしてよくあるリジェクト原因とその対策まで、すべてカバーします。
KDP対応ファイル形式の比較
KDPが電子書籍用に受け付けるファイル形式は以下の通りです。それぞれの特徴を理解して、最適な形式を選びましょう。
| 形式 | リフロー | 目次自動生成 | おすすめ度 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| EPUB | 対応 | 対応 | ★★★★★ | テキスト中心の本全般 |
| KPF | 対応 | 対応 | ★★★★ | Kindle Create使用時 |
| DOCX | 対応(変換) | 条件付き | ★★★ | シンプルな本 |
| 非対応 | 非対応 | ★★ | ペーパーバックのみ |
EPUB形式(最推奨)
EPUB(Electronic Publication)は電子書籍の国際標準フォーマットです。KDPへの入稿で最も推奨されており、以下の利点があります。
- リフロー対応: 読者の端末サイズやフォントサイズの設定に応じて、テキストが自動的に再レイアウトされる
- 目次の自動認識: EPUB内の目次データ(nav要素)をKindleが自動的に認識する
- メタデータ: タイトル、著者名、言語情報などがファイル内に格納される
- 審査通過率が高い: 正しく作成されたEPUBは、他の形式よりリジェクトされにくい
DraftZeroで生成した電子書籍はEPUB形式で出力されるため、そのままKDPにアップロードできます。
KPF形式(Kindle Create)
KPFはAmazonの公式ツール「Kindle Create」で作成される形式です。Word文書やPDFを読み込んで、Kindle用に最適化された形式に変換できます。テーマ(テンプレート)を適用してデザインをカスタマイズできる点が特徴です。
ただし、Kindle Createは日本語の縦書きに完全対応していない面があるため、日本語コンテンツではEPUBの方が安定します。
DOCX形式(Microsoft Word)
DOCXファイルをアップロードすると、KDPが自動的にKindle形式に変換します。最も手軽ですが、変換時にレイアウトが崩れるリスクがあります。
- 見出しスタイル(Heading 1, Heading 2等)を正しく使っていれば目次が生成される
- 複雑なレイアウト(段組み、テキストボックス等)は崩れやすい
- 日本語フォントの表示が意図通りにならないことがある
PDF形式
PDFはペーパーバック(紙の本)のみに使用可能で、電子書籍(Kindle版)には使用できません。レイアウト固定が必要な写真集やイラスト集をKindleで出版したい場合は、固定レイアウトEPUBを使用します。
EPUB原稿の構成要素
正しいEPUBを作成するために、必要な構成要素を理解しましょう。
必須メタデータ
- タイトル: 本のタイトル(KDPに入力するタイトルと一致させる)
- 著者名: 著者の名前
- 言語: 日本語の場合は「ja」
- 一意の識別子: UUID等のユニークID
目次(Table of Contents)
KDPでは目次が必須です。目次がないとリジェクトされることがあります。EPUBの目次には2種類あります。
toc.ncxファイルに記述する形式。古いKindle端末との互換性のために含めることが推奨されます。
HTML形式のナビゲーションドキュメント。EPUB 3の標準仕様で、現在のKDPはこちらを優先的に認識します。
最も確実なのは、両方の目次を含めることです。これにより、すべてのKindle端末とアプリで正しく目次が表示されます。
本文HTML目次
NCX/Nav目次とは別に、本文中にも目次ページを設けることが強く推奨されます。読者が本の冒頭で章構成を把握でき、各章へのリンクから直接ジャンプできます。KDPの審査でも、本文目次の有無がチェックされます。
日本語特有のフォーマット設定
日本語の電子書籍には、英語にはない特有の設定が必要です。
縦書き vs 横書き
| 項目 | 縦書き | 横書き |
|---|---|---|
| 適したジャンル | 小説、エッセイ、詩集 | ビジネス書、技術書、実用書 |
| 読む方向 | 右から左 | 左から右 |
| ページめくり | 右から左 | 左から右 |
| 数字の表記 | 漢数字が自然 | 算用数字が自然 |
| CSS設定 | writing-mode: vertical-rl | writing-mode: horizontal-tb |
| EPUB spine方向 | page-progression-direction="rtl" | page-progression-direction="ltr" |
重要: 縦書きと横書きの設定を間違えると、ページめくりの方向が逆になったり、テキストの表示が崩れたりします。EPUBのOPFファイル(パッケージドキュメント)のspine要素でpage-progression-directionを正しく設定してください。
縦書き時の注意点
- 縦中横(たてちゅうよこ): 縦書きの中で半角数字や英字を横向きに表示する処理。「2026年」の「2026」を横に並べるには、CSSのtext-combine-uprightプロパティを使用
- ルビ(ふりがな): HTML5のruby要素を使用。ルビの文字サイズはCSSで調整(一般的に本文の50%程度)
- 圏点(傍点): 強調のための点。text-emphasisプロパティで設定
- 約物の処理: 括弧や句読点が縦書き用のグリフに正しく切り替わるか確認
フォントの指定
Kindle端末では、読者がフォントを自由に変更できるため、特定のフォントの指定はあまり意味がありません。ただし、CSSでfont-familyにゴシック体または明朝体を指定しておくと、デフォルトの表示が整います。
- ゴシック体指定: font-family: sans-serif; (ビジネス書・実用書向け)
- 明朝体指定: font-family: serif; (小説・エッセイ向け)
画像の埋め込み
電子書籍に画像を含める場合、適切な形式とサイズで埋め込む必要があります。
対応画像形式
- JPEG: 写真やグラデーションのある画像に最適。ファイルサイズが小さい
- PNG: 図表、スクリーンショット、透過が必要な画像に最適
- GIF: 対応しているが、PNGの方が品質が良いため推奨されない
- SVG: ベクター画像。一部のKindle端末では非対応の場合がある
画像サイズの推奨値
KDPでは、1枚あたりの画像サイズに上限があります。
- 最大ファイルサイズ: 1枚あたり5MB以下を推奨
- 推奨解像度: 長辺1,600ピクセル以上(高解像度端末で鮮明に表示)
- 最小解像度: 長辺300ピクセル以上
- EPUB全体のサイズ: 650MB以下(ただし、通信配信コストを考えると50MB以下が理想)
注意: 70%ロイヤリティプランでは、1MBあたり約1円の通信配信コストが差し引かれます。画像が多い本は配信コストが大きくなり、印税が減少します。画像の最適化(適切な圧縮率、不要な画像の削除)を意識しましょう。
画像のCSSスタイリング
画像がKindle端末の画面に収まるように、CSSで以下のスタイルを適用するのが基本です。
- max-width: 100%; で画面幅を超えないようにする
- height: auto; で縦横比を維持する
- 必要に応じてmarginやpaddingで余白を調整する
よくあるリジェクト原因と対策
KDPの審査でリジェクトされる原因は、大きく分けて「技術的な問題」と「コンテンツの問題」の2種類があります。
技術的な問題
KDPは目次の存在を必須とします。目次がまったくない場合、またはNCX/Nav目次のリンクが壊れている場合にリジェクトされます。
- 対策: EPUB ValidatorでEPUBを検証し、目次のリンク先が正しいか確認する
表紙画像が含まれていない、解像度が低い(最低1,000x625ピクセル)、またはアスペクト比が不正な場合にリジェクトされます。
- 対策: 推奨サイズ1,600x2,560ピクセル(1:1.6)のJPEG画像を用意する
電子書籍のファイルサイズが650MBを超えるとアップロードできません。写真が多い本では特に注意が必要です。
- 対策: 画像をJPEG品質80%程度に圧縮する。不要な画像を削除する
EPUBのバリデーション(構造検証)でエラーがあると、KDPの変換処理で問題が発生し、リジェクトされることがあります。
- 対策: EPUBCheck(公式バリデーションツール)でエラーがゼロであることを確認する
日本語の文字化けは、文字エンコーディングがUTF-8になっていない場合に発生します。
- 対策: すべてのHTMLファイルのエンコーディングをUTF-8に統一する
コンテンツの問題
数ページしかないコンテンツはリジェクトの対象です。KDPは明確なページ数の下限を公表していませんが、有料で販売する場合は最低でも2,500語(日本語で5,000字)以上のコンテンツが望ましいとされています。
タイトルや紹介文で示した内容と、実際の本文の内容が大きく異なる場合、誤解を招くコンテンツとしてリジェクトされます。
他者の著作物を無断で引用・転載している場合、リジェクトされます。AIで生成した文章でも、既存の著作物と酷似した内容があれば問題になります。詳しくはAI生成文章の商用利用と著作権をご確認ください。
プレビューとテストの重要性
原稿をアップロードする前に、必ずプレビューで表示を確認しましょう。
Kindle Previewer
Amazonが提供する無料のプレビューツール「Kindle Previewer」をPCにインストールすると、EPUBやDOCXファイルがKindle端末でどのように表示されるかシミュレーションできます。タブレット、スマートフォン、Kindle端末のそれぞれの表示を確認できます。
チェックポイント
- 目次: 各章へのリンクが正しく機能するか
- 画像: 画面に収まっているか、鮮明に表示されるか
- テキスト: フォントサイズを変更しても読みやすいか
- 縦書き/横書き: ページめくりの方向が正しいか
- 改ページ: 章の区切りで正しく改ページされるか
- 特殊文字: 記号や特殊な漢字が正しく表示されるか
KDPオンラインプレビューア
KDPの管理画面にファイルをアップロードした後、「オンラインプレビューア」で確認することもできます。ソフトのインストールが不要で手軽ですが、Kindle Previewerの方がより正確な表示シミュレーションが可能です。
効率的な原稿作成フロー
リジェクトを避けつつ、効率的に原稿を作成するための実践的なワークフローを紹介します。
まずは内容に集中して執筆します。フォーマットは後から整えるので、この段階ではプレーンテキストやWord文書で十分です。DraftZeroを使えば、AIが原稿の下書きを自動生成するので、この工程を大幅に短縮できます。
見出し(H1、H2、H3)の階層を整理し、章立てを確定させます。目次はこの見出し構造に基づいて生成されるため、見出しの付け方が重要です。
Sigil、Calibre、またはDraftZeroなどのツールを使ってEPUB形式に変換します。CSSスタイル、メタデータ、目次を設定します。
EPUBCheckでファイルの構造を検証します。エラーがゼロになるまで修正を繰り返します。警告(Warning)は必ずしも修正不要ですが、エラー(Error)は必ず解消してください。
Kindle Previewerで各端末の表示を確認し、問題がなければKDPにアップロードします。
DraftZeroでフォーマットの手間を省く
原稿のフォーマットは、特にEPUBの技術的な知識がない方にとっては大きなハードルです。DraftZero(draftzero.net)は、AIがコンテンツ生成からEPUB出力までを一括で行うため、以下のフォーマット問題を自動的に解決します。
- 正しいEPUB 3構造での出力
- NCXとNav両方の目次の自動生成
- 本文内目次ページの自動作成
- UTF-8エンコーディングの統一
- 適切なメタデータの設定
- 表紙画像の自動生成と埋め込み
生成されたEPUBはそのままKDPにアップロードして出版できるため、フォーマットに悩む時間をコンテンツの質の向上に充てることができます。
まとめ: KDPでリジェクトされないための鍵は、(1) EPUB形式を使う、(2) 目次を必ず含める、(3) 画像サイズとファイル全体のサイズに注意する、(4) 日本語の縦書き/横書き設定を正しく行う、(5) アップロード前にKindle Previewerで確認する、の5点です。技術的なフォーマットの作業が苦手な場合は、DraftZeroのようなツールを活用するのも賢い選択です。