第15章 お金の計算〜数字に強くなろう〜
土曜日の朝、タロウは自分の部屋の机で、おこづかい帳を広げていた。貯金箱のブタさんが、いつものように静かに机の端に置かれている。
「3200円か…ドラゴンクエストXII 勇者の帰還まで、あと1800円。まだまだ遠いなあ」
そこに、廊下からママの声が聞こえてきた。
「タロウー!ちょっと手伝ってくれる?」
リビングに行くと、ママが買い物袋を台所に置いているところだった。袋の中からは、タロウの大好きなカップ麺とプリン、それに今夜のカレーの材料が顔をのぞかせている。
「近所のスーパーが『開店10周年記念セール』やっててね、色々お買い得だったのよ」
ママは買い物袋を台所に置きながら、レシートを取り出した。
「見て見て。カレーのルーが30%オフ、プリンは20%オフ、それにこのカップ麺は50%オフだったの」
タロウがぱっと顔を上げた。
「50%オフ!?それってつまり…あれ?半額ってこと?待って、30%オフって何だっけ?」
タロウの頭の中に、数字がぐるぐると渦巻き始める。百分率。割合。割引。どれも学校で習ったはずなのに、実生活で使おうとすると急に混乱する。
「そうだ!タロウ、今日はお金の計算を一緒に勉強しよう!」
ママが目をキラキラさせながら言った。
「えー、せっかくの休みなのに…」
「大丈夫!ただの勉強じゃないよ。これからタロウがお菓子を買うときに、『あ、この値段、実はお得じゃない!』って分かるようになる魔法の授業だよ」
その言葉に、タロウの目が少し輝いた。確かに、いつもお店で「20%オフ」とか「3割引」って見かけるけど、実際にいくら安くなるのか、ちゃんと考えたことなんてなかった。
パーセントの謎を解け!〜50%オフって何円?〜
ママはホワイトボードを取り出して、リビングの真ん中に置いた。そしてマジックペンで大きく「50%」と書いた。
「さあタロウ、まずは基本の基本。この『%』ってやつだけど…実は『パーセント』って、『100分のいくつか』って意味なんだよ」
「100分のいくつか…?」
「そう。50%っていうのは『100分の50』ってこと。つまり半分。30%なら100分の30、つまり100個に分けたうちの30個分ってイメージ」
タロウは首をかしげた。
「じゃあ、50%オフって、半分の値段になるってこと?」
「正解!」
ママは嬉しそうに丸を書いた。
「例えば、500円のお菓子が50%オフだったら、いくらになる?」
「えーっと…500円の半分は…250円!つまり、250円で買えるってこと?」
「大正解!」
タロウは急に計算が楽しくなってきた。そうか、50%オフってシンプルに半分になるだけなんだ。
「じゃあ、30%オフだったら?」
ママは次の問題を投げかけた。
「500円の30%って…えーっと、500円を100で割ると5円。その5円が30個分だから、5×30で…150円?つまり、150円引き?」
「おおっ!賢いじゃないか!」
ママは拍手した。
「そう、30%引きってことは、元の値段から30%分を引くってこと。だから500円の品物が30%オフなら、500円から150円引いて…」
「350円!」
タロウの声が弾んだ。
「よし、じゃあ実際にやってみよう!」
ママは財布から千円札を取り出した。
「これはタロウにあげるお小遣いだよ。ただし、これで近所のコンビニで50%オフのお菓子を買ってきてほしい。でも、ちゃんと計算してお釣りをもらってくること。もし計算ミスをしたら、その分はタロウの罰金ね」
「罰金!?そんなの聞いてないよ!」
「冗談だよ(半分はね)。でも、ちゃんと計算できるかどうか試したいんだ。さあ行ってこい!」
タロウは千円札を受け取り、元気よく家を飛び出した。
コンビニに着くと、目当てのコーラ味のグミがちょうど50%オフのシールを貼られて棚に並んでいた。定価は400円。つまり半額の200円だ。
「よし、グミが200円。千円出したらお釣りは800円。簡単簡単!」
タロウはレジにグミを持っていき、千円札を差し出した。
「ありがとうございます。200円になります」
店員さんがにっこり笑ってレシートを渡してくれた。お釣りは800円。計算通りだ。
ところが、その隣の棚に、見慣れたチョコレートの箱が目に入った。『50%オフ!』の大きな文字。定価は600円。
「600円の50%オフは300円か…まだ500円残ってるし、買っちゃおうかな!」
タロウはチョコレートも手に取り、再びレジへ向かった。
「すみません、これもお願いします」
「はい、グミ200円とチョコレート300円で、合計500円です。千円お預かりしますので、お釣りは500円です」
「はい、ありがとうございます!」
タロウは上機嫌で家に帰った。
「ただいまー!ママ、ちゃんと計算して買えたよ!」
「おお、偉い偉い。じゃあ、レシートを見せてごらん」
ママはレシートをじっくりと眺めた。
「ふむふむ…グミ200円、チョコレート300円、合計500円、お釣り500円…」
「でしょ?完璧でしょ?」
「ちょっと待って。チョコレートの定価は600円で、50%オフってことは300円…合ってるね。でも、グミは定価400円の50%オフで200円…これも合ってる」
ママはうなずいた。
「計算は完璧だね。でもさ…」
ママの目がいたずらっぽく光った。
「タロウ、君は今、『50%オフの品物を2つ買って500円使った』わけだけど、もし『50%オフの対象商品を3つ買うと、さらに合計金額から10%オフ!』っていうセールがあったとしたら、どうなると思う?」
「え?それって…3つ買ったら、もっとお得ってこと?」
「そういうこと。でも、あくまで『もし』の話だけどね。実はさっきのコンビニ、そんなキャンペーンやってなかった?」
タロウははっとして振り返った。そういえば、入り口に『50%オフコーナーの商品を3点以上お買い上げで、さらに合計金額から10%オフ!』って書いてあった気がする。
「あっ!見逃した!」
「残念でした〜。あと1つ何か買ってれば、どうなったか計算してみよう。50%オフ後の値段が200円+300円で合計500円。そこからさらに10%オフだと、500円の10%は50円だから、支払いは450円になる。つまり、50円お得だったんだね」
「くそー!あと50円分のお菓子が買えたのか!」
「そういうこと。計算だけじゃなく、そういう情報をちゃんと見ることも大事なんだよ」
割引の大惨事〜50%オフ=無料!?の大誤解〜
数日後、タロウはサクラと一緒に駅前の大型書店に来ていた。サクラが新しい参考書を買いたいと言うので、付き合いがてら自分も漫画の新刊をチェックしようと思ったのだ。
書店の入り口には大きな看板が立っていた。
「『開店5周年記念!全品50%オフ!』」
「すげえ!全品半額だって!」
タロウは興奮して叫んだ。
「すごいね。じゃあ、5000円のゲームソフトも半額で2500円ってことか」
サクラが冷静に計算する。
「うんうん。でもさ、サクラ。50%オフってことは…半分の値段になるってことは…」
タロウの目が怪しく光った。
「ちょっと待ってくれ。もし定価が1000円の品物があったとする。50%オフで500円。じゃあ、もっと大きな割引…例えば90%オフなら100円になる。そして…」
タロウは真剣な表情で指を折り始めた。
「100%オフなら…0円!つまり無料だ!」
「…え?ちょっと待ってタロウ」
サクラが怪訝な顔をしたが、タロウは止まらない。
「てことは!50%オフって、半分は無料になるってことだよな!?だって50%引くってことは、50%分はタダになるってことだ!」
「いやいやいや、それは違うから!」
サクラは慌ててタロウの腕を引っ張った。
「50%オフは『半額』であって、『半分タダ』じゃないよ!」
「だって、50%分の値段が引かれるんだろ?だったら、その50%分は無料ってことじゃないか!」
「そうじゃなくて!…ああ、もう!」
サクラはため息をついて、近くにあった値札を指さした。
「見て、この漫画。定価500円。50%オフで250円だよね?」
「うん」
「じゃあ、250円を払うんだよね?タダじゃないよね?」
「…あっ!」
ようやくタロウの頭の中で電球が点いた。
「そうか…『50%オフ』って『50%の値段を引く』って意味で、『50%が無料』って意味じゃないんだ…」
「そうそう。『50%オフ=半額』ってこと。半分の値段を払えばいいってこと。完全無料ではないんだよ」
タロウは恥ずかしそうに頭をかいた。
「やべえ…ママに聞かれたら笑われるな」
「まあ、よくある誤解だよ。でもね…」
サクラはいたずらっぽい笑顔を見せた。
「もし本当に50%オフ=無料って意味だったら、世界中の人が50%オフの品物を全部持っていっちゃうよ。お店は一瞬で空っぽ。そしたら次の日から『100%オフ!全品無料!』なんてチラシが出て、日本中の人が書店に殺到するんだろうな」
「想像しただけで怖い…」
二人は笑いながら書店の奥へと進んでいった。
消費税の謎〜「なぜ108円なの?」の秘密〜
書店のレジで、サクラは980円の参考書を手に取った。
「お願いします」
店員は参考書をスキャンし、レジを打った。
「お会計は1058円になります」
「はい、千円でお釣りは…あれ?」
サクラは首をかしげた。
「980円の本なのに、なぜ1058円?差額は78円…」
「ああ、それ、消費税だよ」
タロウは得意げに言った。
「消費税?何それ?」
「えっとね、商品を買うときに、国に払う税金のこと。今は10%なんだって。ママが言ってた」
「10%税率ってことは、980円の10%は98円。でも実際の差額は78円だよ。合わなくない?」
サクラの頭が混乱し始めた。
「あれ?消費税って10%じゃないの?」
その時、タロウの背後から声がした。いや、本当は机の上に置いてあるブタさんが、タロウの心の中に話しかけているような感覚だ。でも周りの人は気づいていない。
「おやおや、計算で悩んでいるようだね。でも、ここで声をかけるわけにはいかない。後で自室で説明しよう」
ブタさんの声は確かにタロウにだけ聞こえていた。サクラは気づいていない。
「あ、うん、そうだね。後でママに聞いてみるよ」
タロウはごまかしながら、レジの金額をもう一度見た。
「サクラ、ここでちゃんと考えてみよう。消費税って、実は二種類あるんだって。ママが言ってた。標準税率10%は、お菓子とかゲームとか、普通のものにかかる。でも、本や食べ物には軽減税率っていうのがあって、8%なんだって」
「え、そうなの?なんで本と食べ物だけ安いの?」
「生活に必要なものは税金を低く抑えようって国の考え方らしいよ。でも、高級レストランでの食事は10%で、スーパーのお弁当は8%。同じ食べ物でも、どこで買うかで違うんだって」
「へぇ〜、税金って意外と複雑なんだな」
サクラは感心したように言った。
「じゃあ、この参考書は本だから8%ってこと?980円の8%は…78.4円。切り捨てて78円。合計1058円。つじつまが合う!」
「正解!じゃあ、1500円のゲームソフト(標準税率10%)の税込み価格は?」
「1500×1.10で…1650円!」
「300円のお菓子(軽減税率8%)を3つ買ったら?」
「300×3=900円。900×1.08で…972円!」
「よしよし、理解はできているようだ。でもね、ここで大事なのは『表示価格が税込みか税抜きか』を確認すること。最近は税込み表示が増えたけど、まだ税抜き表示の店もあるから注意が必要だよ」
「そうなんだ…」
タロウは深くうなずいた。これまで何気なく払っていた消費税の意味を初めて実感した瞬間だった。
複利のパワー〜魔法の倍々ゲーム〜
その夜、タロウは部屋でおこづかい帳をつけていた。今日の収支を計算しながら、ふと疑問が浮かんだ。
「ブタさん、お金って増やせる方法があるんだよね?前に『投資』とか『利息』って聞いたけど…」
「おや、ついにその質問が来たか」
ブタさんは貯金箱の中で(実際には動かないが)ちょっと誇らしげな雰囲気を醸し出した。
「お金を増やす方法は主に三つある。働く、預ける、投資する。今日はその中でも『預ける』について、特に『複利』という魔法を教えてやろう」
「複利?」
「そう。複利とは、『利息に利息がつく』仕組みだ。例えば、タロウが銀行に10万円預けたとする。年利1%の定期預金なら、1年後に1000円の利息がつく。これが『単利』」
「うん」
「でも、複利の場合、次の年は元金10万円+利息1000円の、合計10万1000円に対して利息がつく。つまり、2年目の利息は1010円になる」
「たった10円の違い?」
「そう、最初のうちは誤差みたいなものだ。でも、10年、20年と続けるとどうなると思う?」
ブタさんはタロウのスマホを取り出して、計算アプリを開いた。
「10万円を年利5%で運用した場合を計算してみよう。複利でね」
「5%って、結構大きいね」
「これは投資の平均的なリターンをイメージしたものだ。預金の利息はもっと低いが、話をわかりやすくするために使う」
ブタさんは計算を始めた。
「1年後:10万5000円。2年後:11万250円。3年後:11万5762円。5年後:12万7628円。10年後:16万2889円。20年後:26万5329円。30年後:43万2194円」
「えっ!?30年で4倍以上!?」
タロウは目を丸くした。
「すごい!これが複利の力か!」
「待て、まだ驚くのは早い。今度は毎月1万円ずつ積み立てた場合を計算してみよう。年利5%の複利で30年間だ」
ブタさんは本格的に計算を始めた。
「毎月1万円×12ヶ月=年間12万円の積み立て。30年で元本は360万円。これに複利の利息がついて、30年後の総額は約83万6000円…」
「え?元本360万円で、利息が約476万円もつくの?」
「そういうことだ。複利は『魔法の倍々ゲーム』とも呼ばれる。時間が長ければ長いほど、その効果は大きくなる。アインシュタインが『複利は人類最大の発明』と言ったという話もあるくらいだ」
タロウは感動してしばしば言葉が出なかった。
「でも、どうやって複利で増えるのが分かるの?計算が大変そう…」
「いい質問だ。そこで登場するのが『72の法則』だ」
ブタさんはスマホのメモに「72÷金利=お金が2倍になる年数」と書いた。
「72を金利で割ると、元本が2倍になるのに必要な年数が分かるんだ。例えば、年利1%なら72÷1=72年。年利5%なら72÷5=14.4年。年利8%なら9年だ」
「へぇ〜!じゃあ、年利10%なら7.2年で2倍になるんだ!」
「その通り。この法則を使えば、複利の効果をざっくりとイメージできるんだ」
「でも、実際にはそんなに高い金利はないよね?銀行の預金金利って0.01%とかだし…」
「よく気づいたな。その通りだ。預金だけでは複利の効果はほとんど期待できない。でも、投資の世界では年利5%や10%を目指すことも可能だ。ただし、その分リスクも伴う。投資には『元本割れ』のリスクがあるからね」
「リスクとリターンの関係か…前にママに教わったやつだ」
「そう。リスクを取れば取るほどリターンも大きくなる可能性があるが、損失も大きくなる可能性がある。賢い投資家は、預金と投資を組み合わせた『分散投資』を行うんだ」
実践!おこづかい帳の裏ワザ〜「見える化」で節約上手〜
「よし、ここまで教えたところで、実際にタロウのおこづかい帳を使ってみよう」
ブタさんはタロウのおこづかい帳を指さした。
「タロウはおこづかい帳をつけてるけど、『見える化』の力を最大限に活用できているか?」
「うーん、とりあえず書いてるけど…」
「そうか。では、今日から新しい習慣を加えてみよう。それは『お金の流れをグラフにする』ことだ」
「グラフ?」
「そう。例えば、1ヶ月のお小遣いの使い道を『お菓子』『ゲーム』『漫画』『貯金』に分類して、円グラフにしてみるんだ。そうすると、『お菓子にこんなに使ってたのか!』って驚くことがある」
「なるほど…確かに、数字だけじゃピンとこないかも」
「もう一つ、『単位の換算』も重要だ。タロウ、『万円』って単位は分かるか?」
「うん。1万円は10000円」
「そう。じゃあ、1000万円は?」
「1000万…えーっと、0が7個?1000万円=10000000円」
「正解。お金の計算では、大きな数字を扱うことがよくある。例えば、『年収500万円』というとき、それは『月収約42万円』ということだ。単位を換算できるようになると、大きな金額のイメージがつかみやすくなる」
「それは確かに便利そうだ!」
「もう一つ、『概算』のスキルも身につけよう。買い物の前に、『だいたいいくらになるか』を見積もる習慣だ。例えば、200円のお菓子を3つ買ったら600円、それに300円のジュースを買ったら合計900円。レジを通る前に大体の金額が分かっていれば、予算オーバーを防げる」
「確かに!それならおこづかい帳にも正確に書けるね」
「そういうことだ。さあ、実際にやってみよう」
タロウはおこづかい帳を開き、今月の支出を分類してみた。
「えーっと…今月のお小遣いは1500円で始まって、グミ200円、チョコレート300円、漫画500円、文房具300円…残り200円か。円グラフにすると、お菓子が500円で33%、漫画が500円で33%、文房具が300円で20%、貯金が200円で13%だ。お菓子と漫画で66%も使ってる!」
「どうだ?数字だけより分かりやすいだろう?」
「めっちゃ分かりやすい!来月はお菓子を減らして、貯金をもっと増やそう!」
「良い心がけだ。ただし、急に節約しようとすると続かないから、少しずつ目標を設定するといい。例えば、『来月はお菓子代を今月の半分にする』とかね」
「うん、やってみる!」
概算と見積もりの力〜賢い買い物術〜
翌日、タロウはママと一緒にスーパーに買い物に行った。カゴの中には、今夜の夕食の材料がいくつか入っている。
「タロウ、ちょっと問題だよ。このカゴの中の商品の合計金額を、概算で当ててみて」
「え?計算機なしで?」
「そう。暗算でいいから、だいたいいくらになるか予想してみて」
タロウはカゴの中の商品をぐるっと見渡した。
「うーん…牛乳198円、卵198円、キャベツ128円、豚肉398円、カレーのルー198円、にんじん98円、たまねぎ98円…」
タロウは頭の中で計算を始めた。
「200+200+100+400+200+100+100=1300円…くらい?」
「すごい!実際のレシートを見てみよう」
ママはレジを通して、レシートを取り出した。
「合計は…1318円!ほぼ当たりだね!」
「やった!概算って結構使えるんだ!」
「そう。特に『四捨五入してまとめて計算する』のがコツだよ。細かい数字を気にしすぎると、かえって計算がややこしくなる。ざっくりと『200円くらい』『400円くらい』と見積もれば、暗算も簡単になる」
「なるほど!これならお店で買い物するときも、予算オーバーを防げるね!」
「そういうこと。これからは買い物かごの中身をざっくり計算する習慣をつけてみよう」
タロウは嬉しそうにうなずいた。今日も一つ、賢い買い物のコツを学んだ。
タロウの決意〜計算ができるって強い!〜
その夜、タロウは部屋でおこづかい帳をつけながら、今日の学びを振り返っていた。
「ブタさん、今日は本当にいろんなことを学んだよ。パーセントの計算、消費税の仕組み、複利のパワー、そして概算のコツ。どれもすごく役に立ちそうだ」
「そうだな。でもね、タロウ。本当に大事なのは、計算が『できること』じゃなくて、計算結果を『どう使うか』なんだ」
「どういうこと?」
「例えば、30%オフの商品を見て『2000円が1400円になるのか』と計算できるのは素晴らしい。でも、じゃあ『それを本当に買う必要があるのか?』と判断できるかどうかが大事なんだ。計算は道具に過ぎない。最終的には、自分にとって何がベストなのかを決めるのは、自分の頭と心だ」
タロウは深くうなずいた。
「計算ができると、騙されにくくもなる。例えば、『50%オフでもう一割引き!』とか『全品半額!さらにポイント10倍!』みたいな複雑なキャンペーンも、冷静に計算すれば『実際にはいくら得なのか』が分かる。そういう意味で、計算力は『お金の護身術』でもあるんだ」
「なるほど…確かに、計算ができないと、店側の宣伝文句に踊らされちゃうかもしれない」
「そういうこと。逆に言えば、計算ができれば、賢い消費者になれる。買い物の達人として、無駄遣いを減らし、必要なものだけを適正な価格で手に入れられる」
タロウは目を輝かせた。
「よし!これからはちゃんと計算してから買い物する!今日から俺は『計算マスター』だ!」
「その意気だ!ただし、『計算マスター』になるには、まだまだ修行が必要だぞ。次は、基本的な計算以外にも、『利回り』とか『複利の計算式』とか、もっと深い世界が待っている」
「え〜、まだあるの?」
「当たり前だ。世の中には、銀行預金の金利計算、ローンの返済シミュレーション、投資信託のリターン計算…数え上げればキリがない。でも、今日覚えた『パーセントの考え方』と『72の法則』があれば、その辺の基礎はカバーできる」
ブタさんは優しい口調で言った。
「そして何より、計算は練習すれば誰でも上達する。最初は間違えてもいい。大事なのは、『やってみよう』という気持ちと、『間違いから学ぶ』姿勢だ」
ママとの約束〜消費税ごっこで遊ぼう〜
次の日、タロウはママを台所に呼び止めた。
「ママ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「なに?宿題の計算ドリルが分からないの?」
「違うよ。今日はママと一緒に『消費税ごっこ』をしたいんだ!」
「消費税ごっこ?」
ママは首をかしげたが、タロウの説明を聞いて笑い出した。
「なるほど、お店屋さんごっこの進化版ね。面白いじゃない!」
さっそく、台所にある食品や日用品を使ってミニスーパーを開店した。タロウが店員で、ママがお客さんだ。
「いらっしゃいませ!今日は特売日です!」
「まあ、これは安いわね。カレーのルーが350円。じゃあ、それと…この500mlのペットボトル飲料(150円)もください」
「かしこまりました。カレーのルー350円は軽減税率8%、ペットボトル飲料150円は標準税率10%ですね。計算します」
タロウは真剣な顔で電卓を叩いた。
「350円×1.08=378円。150円×1.10=165円。合計543円になります!」
「はい、600円でお釣りは…57円ですね」
「ありがとうございます!またのお越しをお待ちしております!」
笑いながら何度も繰り返すうちに、タロウの消費税計算はかなり正確になってきた。
「もう大丈夫そうだね。ママからの実戦テストは合格だよ」
「やった!」
タロウはガッツポーズをした。
「でもね、タロウ。本当に勉強になったのは、計算だけじゃないんじゃない?」
ママが優しく言った。
「どういうこと?」
「今日タロウは、『消費税の計算は意外と簡単だ』って気づいたでしょ?そして、『分からないことをそのままにしない』って態度を身につけた。これから大人になるにつれて、税金とか利率とか、もっと複雑な計算が必要になる。でも、基本的な考え方が分かっていれば、怖がらずに挑戦できる」
「うん…確かにそうかも。前までは『%』とか『消費税』って聞くだけで頭が痛くなったけど、今はちょっと面白いって思える」
「それが一番の成長だよ」
ママはタロウの頭を撫でた。
「お金の計算ができるようになると、人生の選択肢が広がる。例えば、将来、車を買うときにローンの金利を比較できるし、家を買うときにも返済計画を立てられる。そして何より、『今日の買い物でいくら使ったか』が分かるようになる」
「確かに!おこづかい帳をつけてると、『今月はお菓子に使いすぎたな』ってすぐ分かるもん」
「そう、それが『見える化』の力。数字で見えるから、改善できるんだ」
タロウは自分のおこづかい帳を取り出して、今日の支出を記入した。
今日のまとめ
- グミ200円(50%オフでお得!でも3点買いの10%オフを逃した…反省)
- チョコレート300円(同上)
- 消費税ごっこの学び:軽減税率と標準税率の違い
- 概算のコツ:四捨五入してまとめて計算する
「そういえば、ママ。『72の法則』って知ってる?」
「あら、ブタさんに教わったの?」
「うん。年利が何%だと、何年でお金が2倍になるかが分かるんだって」
「へぇ、それは便利ね。実際、私は投資信託で資産運用してるんだけど、目標利回りを決める時に参考にしてるわ」
「ママも投資してるの?」
「うん。パートのお給料の一部を、毎月コツコツ積み立ててるんだ。長い目で見れば、複利の力で雪だるま式に増えていくからね」
タロウは自分の貯金箱(ブタさん)を見つめた。中には今、3200円が入っている。このお金をどうやって増やしていくか。計算力があれば、その計画も立てやすくなるはずだ。
「ありがとうママ。今日は本当に勉強になったよ」
「どういたしまして。でもね、タロウ。一番大事なのは、計算ができても『お金は道具』だってことを忘れないこと。数字に強くなるのは大事だけど、お金に支配されないで、お金を味方につけるんだよ」
「お金を味方に…か。なんかカッコいい!」
タロウは笑顔で、ブタさんをぎゅっと抱きしめた。ブタさんは相変わらず無言だったが、タロウには「よく頑張った」と言っているように感じられた。
今日の勉強で、タロウは「お金の計算」の重要性を身をもって理解した。パーセントの仕組み、消費税の計算、複利のパワー、そして概算のコツ。どれも、これからの人生で欠かせない知識だ。
そして何より、計算が「楽しい」と思えるようになったことが、最大の収穫だった。数字と仲良くなれば、お金の世界ももっと面白くなる。タロウの冒険は、まだまだ続く──。